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商品の特徴

キャスト用の着色剤がリニューアルして登場。レッド、ブルー、イエロー、ブラックの基本4色と、フィギュア作成に便利なフレッシュをリリース。主剤に数滴添加させることで、鮮やかな発色を得ることができます。

基本情報

商品名 VL01 Mr.キャストナーリキッドNEO レッド
型番 MRキャストナーNEOレッド
メーカー GSIクレオス GSI Creos
商品コード 3321567
メーカー希望小売価格 660円(税込)

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大・タイガー立石展 世界を描きつくせ ! ~ 饒舌に世界を作る、まさに、アートの万華鏡。多彩な作品を楽しみました。このブログのアクセス数が24万件になりました。

 本ブログのアクセス数が、24万件になりました。読者の皆様に感謝申し上げます。

 何度も行き慣れた、周辺の落ち葉が美しい、埼玉県立近代美術館で、

「大・タイガー立石展 世界を描きつくせ !」展

を楽しみました。

 


 
 生誕80年になる、タイガー立石(本名・立石紘一:1941-98)の大規模な展覧会です。
 寅年生まれで、次男ですが、「紘一」と名付けられたのは、〈八紘一宇〉の影響もあるのでしょうか。〈タイガー立石〉のほかに〈立石大河亜〉の名も、1991年からの陶彫(とうちょう=陶土を使って焼き上げた彫刻。上写真の右下参照)などで遣っています。
 生地の筑豊の炭砿の町、伊田町(現・福岡県田川町)での映画体験などは、トポフィリア(場所愛)となって影響しているのかも知れません。

 先日、東京都現代美術館での横尾忠則展に感じ入ったので、こちらも行ってみました。恥ずかしながら、筆者は、タイガー立石については、おぼろげに漫画作品を知っているだけで、プロ・レスラーの様な名前だし、来年は寅年なので、あまり本気を抱いていませんでしたが、何の何の、絵画・デザイン・イラスト・陶彫・・と実に多彩な作品があるのを本展で知り、また、その素晴らしさに感動しました。何事も、観てみるものです。
 余談ですが、日本画の岸竹堂(1826生)などの岸派は、虎を好んで描いていますがその理由は不明です。

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西條奈加『心淋し川』 ~ 擦(す)れるような切なさ、また、心のトポフィリア(場所愛)に導かれるような、繊細で美しい物語ばかりです。しかし、短編に張られた伏線が、最後の第6話で、寂寥感あふれた、驚愕の結末に。

 第164回(2020(令和2)年)直木賞受賞作品の、

西條奈加『心淋し川』(集英社)

を電子書籍(Kindle版)で読みました。

 

 西條奈加(さいじょう なか・1964(昭和39)年北海道生まれ)作品は、先日(10月31日)「曲亭の家」で感動したばかり。早速、本作を読みました。
 2005年「金春屋ゴメス」でデビューし(日本ファンタジーノベル大賞)、本作で直木賞を受賞した作家です。近時は、女性作家が、大活躍しています。

 

 本作は、切ない、また、心の芯に触れる物語ばかりですが、各作に散りばめられた伏線が、最後に、驚く結末となります(「直木賞」受賞の理由が分かりました。)。したがって、間違っても、最後の作品から読まないでください。

 第1編は、表題になっている「心淋し川(うらさびしがわ)」

 江戸・上野の千駄木権現の北の裏手にある「裏町」を流れる川は、昔は、「心淋し川(うらさびしがわ)」と言われた様で、いつしか町自体も「心町(うらまち)」と言われるようになった、トポス(場所)です。
 幅3間ほどの泥川は、台上の大名屋敷から流て来ていて、心町のすり鉢状の底の土地で、どこにも行きようが無いように、芥を溜め込んで流れない淀んだ川になっています。
 流れない川、芥を溜め込んで淀む川、それは、また、そこに生活する人間の様で、そこの住民は、皆、心に淀みがあり、事々を流してしまったほうがよほど楽なのに溜め込んでしまっている様です。

 酒癖が悪く、博打好きの父と、愚痴話ばかりの母と暮らし、裁縫仕事で生計をたてている、主人公〈ちほ〉(19歳)は、その川、その町から早く逃れたいと思っていました。
 ある時、仕事を貰っている仕立屋「志野屋」で会う、紋上絵師(着物に紋を描く絵師)を知り、恋仲になります。

 その絵師〈元吉〉(24歳)の年季明けが近く、ちほは、一緒になれると心を弾ませますが、腕の良い元吉に、京での3年の修業の話が、親方から持ち上がります。年季は、もっと延びるかもしれません。
 既に、子どもをもうけて夫のいる姉の〈てい〉は、早く子どもをつくってしまえなどと言いますが、そう言うちほではありません。
 一方、以前からちほに心を寄せていて、元吉との関係に遠慮していた、仕立屋の手代からも求婚されます。
父親は、元吉に怒り心頭です。さて、その狭間で、ちほが選んだ生き方は・・(あなたなら、元吉か手代か、どちらの道を選びますか)
 その時、淀んだ川にあった赤い布切れが無くなっていました。

 川を擬人化して、静かに、ちほと元吉の心持ちが描かれます。トポフェリア(場所愛)に満ちたナレーションの如く、街を語るのは、50歳半ばの差配の〈茂十(もじゅう)〉。
 茂十という人物は、過去が知れませんが、親切で優しい。
 いずれの登場人物も、皆、善人で、悪人は一人として登場せず、静かに、秘められた情熱が、秀逸な流れで描かれ、まさに、忘れていたものを想起させるような、心が洗われる物語です。

(因みに、ここで知識を追記しますと、江戸での仕立屋は、男が大半で(「男仕立」)、女の裁縫師は、町屋では「針妙(しんみよう)」、武家屋敷では「お物師」、遊女屋では「お針」と言ったようです。)

 第2話は、「閨仏(ねやぼとけ)」

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芦沢央 『神の悪手』 ~ たしかに、これはミステリーだ ! 背筋が何となく薄ら寒くなる心理描写の見事さとストリー造りです。

 新聞の書評欄で好評だった、「将棋」を遣ったミステリーの5作品の短編集、

芦沢央 『神の悪手』(新潮社)

を楽しみました。

 

 巧い !!
 芦沢央(あしざわ よう。1984-)。千葉大学文学部卒業で、デビューした2012年(「罪の余白」。野生時代フロンティア文学賞受賞。2015年映画化。)まで投稿生活を続け、2021年には、第164回直木賞候補(「汚れた手でそこを拭かない」)になった努力家で、初めて読みました。

きグルみっくV3 -ベストエピソードコレクション- 初回限定版 【DVD】 

 本作を読んでいて、細かい比喩や表現に、まこと「文学らしさ」を感じ入ります。
 それ以上に、「社会性」ある「ミステリー」内容に感じ入り、特に、本作第一編目の「弱い者」など、(《ネタバラシ》は避けますが)震災後のボランティア活動の将棋の話しかと思っていたら、最後、哀しい犯罪が出て来たのには、驚愕し、作者にねじ伏せられました。

 表題作の第二編目、「神の悪手」は・・、

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中野信子/熊澤弘『脳から見るミュージアム アートは人を耕す』 ~ 知らないこともあって、そこは有益でしたが、相対的に、表題にそぐわない内容でした。

 余談から。16日(火)、17日(水)、18日(木)の3日間、計4時間半、NHKBS①、NHK-総合で放送された、5年に一度(今回は、コロナ禍で6年ぶり)の「ショパン国際ピアノコンクール」のドキュメントは、素晴らしかった。
 16日は、日本人ピアノ調律師を追い、17日は、今年の第18回コンクールの反田恭平(2位)さんを追い、19日は、クローズアップ現代で、反田恭平小林愛実(4位)さん二人を追い、演奏も放送されました。没入して、調律師と音楽家の“戦い”に見入ってしまいました。

 さて、本題。
 面白そうな観点なので、早速、読んだのが、

中野信子/熊澤弘『脳から見るミュージアム アートは人を耕す』(講談社現代新書)

です。

 

 中野信子さんは、BS「英雄たちの選択」や金曜日午前中の報道番組のゲストコメンテーターに出演されている、東京大学工学部卒、同医学系研究科博士課程卒でフランスでも学ばれた「脳科学」を専門とするチャーミングな才媛なので、ぜひ読んでみたい本でした。
 対談形式で、お相手が、熊沢弘氏、東京藝術大学大学美術館准教授であれば、なおさら読書欲がそそわれます。
 しかも、本書で知ったのですが、中野さんは、キュレーション(学芸員)を学ぶべく、東京藝術大学大学院国際藝術創造研究科博士課程後期に通学中とかで驚くというか、感心するというか、です。

 で、本書ですが、脳とアートの直接的な話はされていません。
 ミュージアム史、世界の博物館、ミュージアム運営の現状と影の部分などが、ほとんど熊沢氏によって、やや講義調で、饒舌に語られます。中野さんは、聞き役という感じです。
 途中、中野さんが脳科学の観点から口を挟みますが、大半は“拝聴”している中での、ちょっと、取って付けた感があります。
ですから、本書の表題は難があり、著者名も逆のように思います。
 余談ですが、対談中に、「ヤバい」という表現が頻出しますが、私は、歳のせいか、どうも、お二人にそぐわないように思えて、違和感を感じます。

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ベリーニ 『カプレーティとモンテッキ』(全2幕) ~ スピーディでスリリングな展開。圧巻の山下裕賀、貫禄の佐藤美枝子。コロナ禍の時代に、魂の根源を覗く演出と声楽陣の熱演でした。久しぶりの《銀ブラ》雑感も書いてみます。

 久しぶりのオペラ鑑賞です !!
 11月13日(土)、日比谷・日生劇場で、

オペラ『カプレーティとモンテッキ』(全2幕)

を鑑賞しました。

 

(写真は、日生劇場ホームページから引用しました。)
 コロナ禍で、多くのオペラが上演中止となって、本当に、久しぶりのオペラ鑑賞ですので、鑑賞後は、直帰せず、近くのホテルに宿泊して、ゆっくり余韻を楽しむことにしました。

 このオペラの作曲家・ヴィンチェンツイオ・ベリーニ(1801-1835)は、33歳で死にますが、28歳の作品です。台本は、フェリーチェ・ロマーニ(1788-1865)。約2時間半。

 第1幕第2場の、ジュリエッタのアリア《Oh! quante volte (ああ、幾たびか)》は、有名ですが、オペラは、地味で変化が無く、しかも、ロメーオは女性(いわゆるズボン役)ということでか、やや敬遠されて、あまり上演されないオペラですが、どうして、どうして、物語の展開はスピーディだしスリリング。

 

 ヴァグナーが誉めたという、《無限旋律》的な音楽で、その理由(わけ)が分かりました。
 今回、カーテン・コールで、モンテッキ家当主ロメーオ役の山下裕賀(メゾ・ソプラノ)への拍手が、もの凄かった。この山下裕賀(ひろか)を聴けたのも大きな収穫でした。きっと、外国に留学してしまうのでしょうか。フレーズの繰り返しのヴァリエーションも見事でした。

(なお、モンテッキ家は、ギベリーニ党【神聖ローマ帝国皇帝派】です。また、「ズボン役」についてですが、初演時に、ロメオを、フェニーチェ劇場のメゾソプラノ歌手ジュディッタ・グーリッジに合わせて作曲して以来、女性が歌っているもので、演奏には、クラウディオ・アバドの1966年のテノールバージョンもあります。)

 対するカプレーティ家の娘ジュリエッタ役の、チャイコフスキー国際音楽コンクール(1998年)声楽部門で日本人初の第1位、べくカント声楽の第一人者、佐藤美枝子は、さすが貫禄で、やはり大きな拍手、余談ながら、お辞儀の仕方もチャーミングそのものでした。
(なお、カプレーティ家は、グエルフィ党【ローマ教皇派】です。)

 

 歌手は、そのほか・・、

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澤田瞳子『輝山』 ~ 筆者の推薦、今年No1 !  最後の最後まで熱読してしまう、稠密な内容。深い人間物語をスリリングに描き、あわせて、背景に散りばめられる日本の鉱業産業史が有益です。

 毎作、丹念な調査と骨太な物語を楽しめる、私もファンである著者の新作、

澤田瞳子『輝山(きざん)』(徳間書店)

を耽読しました。

 

 最盛期には、世界の1/3の銀を採掘したと推定される、江戸期の島根県石見銀山を舞台にした物語です。2007年に世界文化遺産登録されています。
 著者は、同志社大学で史学を学び、博士課程にも進んでいます。「文壇」仲間で集いあっているのでは無く、この様な作家が増えたのは喜ぶべきことだといつも思っています。

輝山》とは、40歳位までしか生きられない鉱山の死病(「気絶」【けだえ】)に罹る銀山の堀子たちにとって、その銀山の御山、「仙ノ山」は、痩せた土地で農業も営めない中で、唯一、収入をもたらす、輝ける山に見えるのです。
 しかも、それは、命と引き替えに銀を産む恐ろしい山では無くて、人々を懐に抱き、その命の輝きを永遠に宿し続ける山でもあります。
 この物語は、そこに暮らす人々の、様々な命の物語を語っていきます。

 幕府直轄の石見(いわみ)銀山を舞台にした7年間の物語ですが、しかし、銀山坑内を舞台にした、映画「黒部の太陽」のイメージを思い浮かべるとそうではありません。
 鉱山周辺の人々の生き様を辿っていきます。

 まずは、石見国邇摩(にま)郡の「大森代官所」の中間(ちゅうげん)・金吾(きんご。30才。実家は江戸・雑司ヶ谷。)が主人公です。
 金吾の、7年間の、成長物語と、金吾が経験した、「銀山」の街と代官所のある「大森」を舞台にした、深い男女の業や政争の人間物語、時には、懸命に生きる人情物語風な小説です。まことに様々な物語が、438頁、最後の頁までダレること無く盛り込まれている作者の筆力に驚嘆します。

【因みに、代官所直営の銀山は、御直山(おじきやま)、山師が開発する銀山は、自分山と言い、後者は運上金を納付します。
銀山の用語に触れておくと、「間歩」(まぶ=坑道)で、「」(くさり=鉱石)を掘るのが、「堀子」で、5交代制で働きます。
 掘った鏈を運ぶのが、「柄山負」(がらやまおい)で、その彼らの下仕事は、まだ年少の「手子」(てご)がします。
 堀子たちが腰に下げているのは、「松入」で、山槌・鉄子・山箸などを入れます。また、「しきまつ」という藁編みの円座も持って間歩に入ります。

 坑道の入り口は、「四ツ留」と言い、坑内に入るのは、「敷入り」(しきいり)です。深い底は、「根戸」と言います。
 堀子の収入は、1度鉱に入ると銀2匁、手子では、5分2厘ほどと、当然ながら大きな差があります・・、と言ったことが本書に書かれています。

 ところで、堀子は、間歩で、粉塵・ガス、湿気、螺灯の油煙などを吸い、ほぼ40歳前で病(気絶【けだえ】)が出て死ぬのが常で、坑道での毎日の死の覚悟の上に、病での早死の覚悟をしているのが、この物語の大きな題材になっています。】

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吉田誠治『ものがたりの家 - 吉田誠治 美術設定集-』 ~ 空想の夢に浸れる、まさに《浪漫の増幅装置》(紀伊國屋書店)。33の空想の家の素晴らしいイラストと「設定画」を観て、その続きの物語を考えます。

 夢のある、ユニークな書物です。
 20年のキャリアを持つ、ゲームの背景グラフィッカー、イラストレーターが造った、

吉田誠治『ものがたりの家 -中野誠治 美術設定集-』(パイ・インターナショナル。A4版変形。2,200円)

です。
 2020年7月刊行以来、現在9版を超え、イタリア語版、スペイン語版、ハングル版など、続々と出版されているそうです。

 

 「美術設定」とは、はじめて知りましたが、アニメーションやゲームを製作するときに、世界観を共有するため描かれる絵と言われます。ここでは、その家に暮らす人物の(皆、孤独な一人ですが)生活状況をイラストで切り取ったものです。
 読者は、そこから、自らの物語を空想していきます。

 本書では、空想の33の建築物の外形イラスト(左頁)と、内部のイラスト(右頁)が絵本の様に掲載されています。

 

 そこから、その世界に浸ると共に、その後の物語を自分で想像することになります。
 誠に、夢のある書物で、新宿紀伊國屋書店が、《浪漫の増幅装置》と言うコピーを思いついたのが頷けます。

 その建造物は・・、
悪戯好きな橋塔守」と言う、英国中世の城門に住みついた無法者の“家”から始まって、「炭砿夫のエンジン小屋」と言う、20世紀初頭の英国廃坑小屋に住む少年の“家”まで、33あります。

「炭砿夫のエンジン小屋」については、巻末に「メイキング」が掲載されていて、6頁にわたる解説が有益です。
 また、「寡黙な整備士の別荘」(アメリカ・モンタナ州)と言うイラストには、やはり巻末に「ある一日の終わりに」という生活の断面が4頁にわたって載っています。
 アメリカの家、と言えば、「賞金首の芝生小屋」という、開拓時代の芝生を積み重ねて壁にした《ソッド・ハウス》は、初めて知りました。

 全ての家が、きちんとトイレについて触れられて、書かれているのには、感心しましたし、しかも、別に2頁にわたる「トイレの歴史」まで書かれているのには、評価できます。テレビ番組で、山の一軒家を訪ねているのを観ていて、いつも気になるのがトイレだからです。

 

 
書物好きには、日本の「階段堂書店」や、「失われた書物の図書館」(チベットからのアイディア)などに注目。
 冒険好き、植物好き、魔女好き、孤独好き・・それぞれ、堪らない空想の家が現れます。中には、廃戦車や廃地下鉄駅に住む孤独な人もいます。

 最後に、著者の、地下室の「アトリエ紹介」が、紹介・掲載されていて興味が尽きず、羨ましい。

 

 ひととき、空想の世界に遊べることの出来る、楽しい、“絵本”です。★

河合香織 『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門会議』 ~ 最初のコロナウイルス蔓延の対策に当たった専門家たちの、勝手なことを言われ、主旨も理解されず、責任は押しつけられる、大混乱の中での、冷静な行動の約半年の記録です。

 なぜか、遠藤周作の、昨年発見された原稿「影に対して」の、「アスファルトの道は安全だけれど振り返って足跡が残っていない。砂浜は歩き難いけれど足跡が残る」という文章を思い出しました。

 まことに人間社会のコミュニケーションは、難しい。
 仲間内でも、対役所でも、ましてや、対国民となると。
 未知のウイルス《COVIDー19》と対峙した「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(座長・脇田隆字、副座長・尾身茂)」の、2020年2月から同年7月までを追った記録、

河合香織 『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門会議』(岩波書店)

を読みました。

 

 COVIDー19は、感染してから症状が出るまでにウイルスをばらまき(ここが特長で怖いところ)、症状が出ると、一気に両肺がやられて重症化する感染症で、治療薬も無く、治療方法も確率していません。
 2020年2月3日に、この感染者を出した、ダイヤモンド・プリンセス号が横浜大黒埠頭に到着します。

 厚生労働省は、メールで、省のアドバイザリーボードの専門家に緊急依頼し、2020年2月16日に、上記の会議を招集しましたが、委嘱状も出していなかったようです。
 専門家は奮闘しますが、「緊急事態宣言」が発出・拡大されると、怒った国民から、長野県で損害賠償請求の民事訴訟を起こされた委員もいますし(中山ひとみ弁護士)、身の危険を感じて家の表札を外した委員(押谷仁教授)もいます。尾身副会長は、殺害予告を受け、警察の警護がつきました。他の委員にも脅迫状が届きました。
 こう言ったことが、詳細にこの本に書かれています。

 何よりも、感染症に対峙する中で、専門家と官僚・政治家の発想の違いが事態を一層深刻にします。
 科学の専門家は、事態の推移に応じて、また、事態を予見して、エビデンスが出揃う前に対応を考える必要を重視しますが、官僚・政治家は、“無謬性の原則”を習いとしていて、また、国民に“エッジが効き過ぎる”“不安にする”のを恐れます(だから、具体的なことを言わず「総合的に勘案して決める」などと言うのでしょう)。
 専門家が、厚生労働省に出す文書すら、事前に、出されるほうの厚生労働省が修正要求を重ねる様には、あきれてしまいますが、これなど、一番想像がつくところです。

 懸命な専門家の“前のめり”(あえて、尾身委員がこの語を遣いました)になった対応に、政治家は、それに遅れてはならじと、一歩その先を行く対応を発表しますが、それが「小中高学校一斉休校」(3月2日)であったり、「全戸マスク配付」といった奇手となり、専門家が「椅子から転げ落ちそう」に驚きます。

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『美男におわす』展 ~ 新しく知った画家のコンテンポラリーな作品にひかれました。

 初冬、快晴の一日、埼玉県立近代美術館で、会期末の、美人画ならぬ、《美男画》ばかりを集めた、

『美男におわす』展

を鑑賞しました。

 

 若い女性も多く来ていました。
 たしかに、美人画はありますが、《美男画》なんて聞いたことがありません。人々の趣味・思考が多様化した現代に、あえて、ジェンダーの制約を超えて、《美男》のイメージを突き詰める趣向も、また、面白いものでしょう。

 会場は、5つの章から構成されており、「伝説の美少年」・「愛しい男」・「魅せる男」・「戦う男」・「わたしの美男、あなたの美男」となっています。しかし、男のイメージってこれだけでしょうか。もう少し、発想を練れなかったのでしょうか。
 因みに、現代作品の写真撮影は自由になっていました。

 筆者は、まず、昔の作品では、第四章(「戦う男」)の、16枚並ぶ、月岡芳年の木版画と、
高畠華宵(1888ー1966)の「さらば故郷」(実業之日本社「日本少年」1929年3月号口絵)【下写真】の、ありそうで無い構図にひかれました。

 

 そして、この展覧会で新しく邂逅して、魅入ったのは、第五章(「わたしの美男、あなたの美男」)金巻芳俊(1972-)の「空刻メメント・モリ」(2021)です【下写真】。死と隣り合わせの我々、また、現代人を表現しているのでしょう。
 この作者は、《アンビバレンス・シリーズ》に人気のある作家だそうですが、筆者も今後注目したいと思います。

 

裏から見ると、

 

 もう一人、これも、前者とほぼ同年代の、木村了子(1971-)です。

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西條奈加 『曲亭の家』 ~ まことに「人の幸不幸は、おしなべて帳尻が合うように出来ている。」。心に染みいる深い感慨を持って読み終えました。

 江戸時代後期の読本「南総里見八犬伝」などの作者、曲亭馬琴(きょくていばきん・1767-1848。本名・滝沢興邦【おきくに】)の、両眼失明(1840年)後に、「八犬伝」の続きを口述筆記・清書・校正をして完成させた、息子の嫁・(みち)のことは、うっすらと知っていまいしたが、その半生をきちんと知ったのがこの書物、

西條奈加 『曲亭の家』(角川春樹事務所)

です。

 

 作者(1964-)は、2021年1月の、第164回直木賞を「心淋(うらさび)し川」で受賞しています。北方謙三評によると同作は、「欠点が無いのが欠点」だとか。

 本書の主人公である路(みち)が、馬琴死後には、「曲亭琴童」と言う筆名で、馬琴の漢文調の「八犬伝」を、読みやすい「仮名読八犬伝」として、第17編から書いて完成していたことも、始めて知り、驚きでした。
 因みに、鏑木清方が描いた「曲亭馬琴」(1907)の絵の右側に描かれているのが、琴童です。

 

 さて、「路」ですが、江戸時代は、本書にもあるように、人別帳では夫婦別姓ですから、正式には「土岐村路」(1806-1858)です。医家で、歌舞音曲も嗜む、土岐村元立(げんりゅう)と琴夫婦の三女で、兄・元裕(げんゆう)も医家ですが、兄と父親は、仲悪く、後年、義絶しました。
 本書は、路が、22才で、滝沢家に嫁入りしてから、晩年までを、押さえた筆致で、丁寧に描いて行きます。

 まずは、物語冒頭、見合いから半月で結婚した路が、3月半で、婚家を飛び出すところから始まります。
 まさに、滝沢家の家族関係では“波瀾万丈”の苦労ばかり。嫁いだ滝沢宗伯(本名・鎮五郎【しずごろう】)は、松前志摩守に仕える医家とは名ばかりで、万年病弱でいつも伏せっており、しかも癇性持ち。加えて、今で言うDVの暴力で、三人目の子どもは流産までします。

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巨大な「角川武蔵野ミュージアム」の、本のジャングルを“探検”してきました。

 やや北風の強い日に、昨年11月に、埼玉県所沢市にオープンした、

「角川武蔵野ミュージアム」

に行ってきました。
 JR武蔵野線、「東所沢」駅から、徒歩10分弱、やがて、「ところざわサクラタウン」内に隈研吾デザイン監修の巨大な岩石の塊のような建物(地上5階・面積12000㎡)が見えてきました。約2万枚の花崗岩を組み合わせた61面体の建物です。
 外壁の絵は、鴻池朋子「武蔵野皮トンビ」です。
 鴻池作品は、アートが人間中心であることに違和感を持ち、動物も、風も、雨も、雪も、石山のような無生物も比喩として人間を語ります。まことに、この建物の外壁に相応しいアートです。

 

 2階で、入場料(3時間)2,000円(スタンダードチケットだけで、マンガ・ラノベ図書館に入らないと1,400円です。)を支払って、4階に上がると、松岡正剛監修による9つに分類(「記憶の森へ」「世界歴史文化集」「むつかしい本たち」「脳と心とメディア」「日本の正体」「男と女のあいだ」「イメージがいっぱい」「仕事も暮らしも」「個性で勝負する」)された約25,000冊の本が展示された50mの通り(エデット・タウン、エディット・ストリート)があります。

 

 その裏側は、博物学者・荒俣宏監修の標本・珍品・模型などが並ぶ、2つの「荒俣ワンダー秘宝館」(「生命の神殿」「半信半疑の地獄」)。

 なぜか、チケットと共に、「フロアガイド」を渡されず、5階のエレヴェータ・ホール脇のラックにそれがあるのに気付かなければ、細かいことをスルーしてしまうところでした。なぜ、最初に渡さないのかしらん。また、そのガイドも、博物館・美術館をうたっているのならば、フロアコンセプトなどを詳しく掲載すべきでしょう。

 さて、置かれている本は、手にとって読めるように、椅子が適宜置かれています。写真撮影も自由です(ストロボは禁止)。棚の並べ方に工夫がされていて(隈研吾デザインの互い違い風棚)、また、超大型書籍がたくさんあるのが魅力的です。こんなに、大型書籍が発行されているのが、驚き。
 筆者は、ここで手に取った、海賊の“ルール”を書いた本が面白そうだったので、読むことにして、メモしました。

 奥に進むと、昨年「紅白歌合戦」にも遣われた、高さ約8m、約30,000冊の巨大な本棚に囲まれた「本棚劇場」があります。
 KADOKAWA刊行物のほか、角川源義文庫・山本健吉文庫・竹内理三文庫・外間守善文庫など個人蔵書が並べられたものです。
 ただし、ここは、眺めるだけで、本を手に取ることは出来ません。書物が、デザインだけの空間の意味は、はて、なんでしょうか。

 

 出口に近い、4階ギャラリーでは、「俵万智展 # たったひとつの「いいね」『サラダ記念日』から『未来のサイズ』まで」が行われていました。
 300首が、カラフルに、工夫されて展示されていて、見入ってしまいます。随分、地道に活動を積み上げられていることが分かりました。

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佐藤直樹『東京藝大で教わる西洋美術の見方』 ~ 素晴らしい ! 目からうろこ。新しい視点(造形分析)で、古代彫刻のコントラポスト(立つ姿勢)から「中世に学ぶ」精神のバウ・ハウス宣言まで辿ります。

 急に寒くなったので、筆者と妻の、ベッドの寝具を冬仕様にしたり、洗濯したり、暖房のセッティングをして半日過ぎました。
 合間に、先日から、読んでいる、児童図書の河合祥一郎訳 『ドリトル先生航海記』(角川つばさ文庫)を楽しんでいます。活字の大きさが、老体にちょうど良い。
 つぎは、児童書で、この本の近くにあった「ゲド戦記」も読もうと思っています。

 このところ素敵な本ばかり見つかって、運動不足になりそうです。
 書店で、題名にひかれて読み始めたのが、

佐藤直樹『東京藝大で教わる西洋美術の見方』(世界文化社)

です。

 

 藝大では、絵画の知識が豊かな学生に、通り一遍の概論や絵画史を教えている訳が無い、と思ったからです。
 案の定、でした。まずは、難しく言えば、「造形分析的アプローチ」。それも、著者の専門のドイツ、北欧の画家が俎上にのぼります。印象派絵画など、そこら中に本があるので、勝手に勉強なさい、という感じで一切出て来ません。

「造形分析的アプローチ」、と言っても、本書は、一般読者も読む書物ですから、そんな用語は「あとがき」に一度出るだけで、後は、一枚づつの絵で分析が始まります。例えば・・、ヤン・ファン・エイク「アルノルフィーニ夫妻の肖像」(1434)
 

では、数か所にポインターを当てる様な感じで、写真も当該部分が拡大されて、細かく《意味》が説明せれていきます。この絵は・・、

 

1 結婚式の絵なのに、どうして司祭のいない肖像画風なのか、
2 シャンデリアの蝋燭は、1本だけ点っているが(このこと自体見落とします)、その意味は、
3 窓辺の果物の意味は、
4 足下の犬の意味は、
5 寝台の柱の彫刻の意味は、
6 脱ぎ捨てられた履き物の意味は、
・・という感じで、さらに、
7 総じてこの絵の意味するところは何か、
 と問われる感じで【答えは、後述します。】、
 さらには、この作品は、
ヒエロニスム・ボスの絵(「七つの大罪」1480年)に影響を及ぼして(143頁)いる、という多重に影響しあう画家たちも細かく分析されていきます。
 このような分析が(しかも、説明は、平易で、分かりやすい)、多少、分析方法が変わりますが、ざっと数えたところ200枚近く掲載された絵で為されますので、この本を読み終えて、絵画の鑑賞に影響しない訳がありません

 また、著者の専門である、ドイツ・北欧の画家が中心と言っても、その画家たちの大半がイタリアに出て来ていて、影響を受けていますから、記述の多くは、イタリア絵画・彫刻に、さらには、フランス、英国絵画にも触れることになります。
 特に、ルネサンスを重視した記述ですから、「あとがき」を読んで、ドイツ、北欧、を悟るほどです。
 ミケランジェロ・ブオラローティ、レオナルド・ダヴィンチ、ラファエロ・サンティ、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ、
それに、
「聖ルカ兄弟団」(1809)・「ナザレ派」(1810)や「ラファエル前派兄弟団」(1848)、1885年の「レ・ヴァン(20人展)」からの総合芸術(純粋芸術+応用芸術)、
さらには・・、

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福岡伸一 『生命海流ーGALAPAGOS』 ~ 最高に面白い。185年前のダーウィンを辿った「ガラパゴス諸島」への6日間の、対象も著者も《ピュシス》な冒険旅行の記録。

 最近、毎朝一番に見る、新聞(朝日新聞)の連載が、
新・ドリトル先生物語ードリトル先生ガラパゴスを救う」、
です。
 当初、原作、ヒュー・ロフティング(1886-1947。英国)の「ドリトル先生シリーズ」(1922~1952)との関係が分からなかったのですが、原著作権が、2008年に満了したので、「ドリトル先生航海記」(新潮文庫)を訳している著者として、オリジナル物語を書いたものです。

 その著者、福岡伸一(1959-。京大卒・生物学者)のガラパゴス諸島探検記が、出版されたと聞いて興味を持ちました。
 しかし、筆者は、あまり「爬虫類」が好きでは無いので、「ガラパゴス」と聞いて、その著書を読むのに躊躇したのですが、読んだら面白い。爬虫類嫌いなどすっ飛んでしまいました。その本は、

福岡伸一 『生命海流ーGALAPAGOS』(朝日出版社)

です。
 読み始めると、本当に、面白くて止められません。

 

 本書での、著者のテーマは・・、
1 ガラパゴス諸島に生息する生物は、どこから来たか。なぜ、この様に進化したのか。
2 ヨーロッパ人(白人)以前に、ガラパゴス諸島を発見したのは、誰か。
3 1535年にヨーロッパ人が発見してから、1832年にエクアドルが領有権を主張するまでの空白期間はどうだったのか。
4 ダーウィンが目にした《ピュシス》(自然・生命の実相)を追体験したい。
と言うことです。あわせて、
5 コロナ禍のウイルス問題、生命進化の利他性についてもふれます。

 著者が、永年の夢をかなえて、出版社の協力で、本格的なコロナ禍直前の、2020年3月4日に、借上た船「クイーン・マーベル」号(全長13m・排水量40t・平均速度15km)で出向するまでが、まず前半66頁を費やして語られます。読んでいるこちらも、ワクワクしてしまいます。

 

 余談ですが、その中に「マンスプレイニング」を批判した文章があります。これは、オジサンが、若い女性に蘊蓄を語るというジェンダーの平等性にもとる行動です(レベッカ・ソルニット「説教したがる男たち」)。この例に「ブラタモリ」が出て来ます。

 この旅を終えて帰り、著者が、ニューヨークのアパートに着いたのが3月11日で、その後、16日からガラパゴス諸島は、立ち入り禁止となり、まさに、コロナ禍の間隙をぬっての旅だった訳です。

 2020年3月4日から5泊6日の旅に、マーベル号は、1835年に、ダーウィン(当時22歳)が、英国領とする土地を探索する女王陛下の船、「ビーグル号」(全長27m・排水量242t・大砲6門・軍人74名乗船。正確には、「女王陛下の船 ベーグル号」)にコネで乗船して、ガラパゴス諸島を辿ったのと、ほぼ同じコースを辿って探検します。

 


(サンタ・クルス島→フロレアナ島【真水あり】→イザベラ島【1,000m級の2火山】→同島ブンタ・モレーノ→同島ウルビーナ・ベイ【ゾウガメ、リクイグアナの繁殖地】→ボルバル海峡→フェルナンディナ島→タグス・コープ【昔の、海賊船や捕鯨船の停泊地】→サンティアゴ島→サンタ・クルス島→レオン・ドルミード【「まどろむ獅子の岩」(高さ50m)】→サン・クルストバル島。なお、サン・クルス島とサン・クリストバル島は、観光地化されていて、前者には「ダーウィン研究所、後者には観光ジョウホウセンターがあります。)

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ピニオンギヤ M2 M2B15

 余談ですが、妻のために、「終活」のメモ、私が死んだ時のメモ、を作っていたら、ネットで、死後に、相続人が、死者の全ての転籍した戸籍を集める必要がある時に、2024年から、最寄りの役所で一括して取れるようになるということが分かりました。
 筆者など、父が、新聞記者だったので、また、自分の引っ越しも含めて、8か所ほど移転の度毎に本籍を移していたので、「面倒な」問題が、一つ解決しそうです(24年まで生きていれば、ですが)。

 そう言うことをしていると、今日のようなハウツー本は、あまり買わないのですが、魔が差すというか、著者にもひかれて電子書籍を、スマホで「ポチ」して(買って)しまいました。1冊目は・・、

森村誠一 『老いる意味 うつ・勇気・夢』(中公新書ラクレ)Kindle版

です。

 

 著者が、3年間、ウツ症状だった時に、「文字」から遠ざからないように、その都度思い浮かべた「文字」を、紙に書いて、それを壁に貼った写真はリアルです。
 しかし、全体的に、新鮮味のない、通り一遍のことを、書き流した感じの書籍です。
 療養中に、リハビリを兼ねて書いた短文を集めたものではありますまいが。

 さて、もう一冊です。
 先述お話しした、「ポメラ」に入力した原稿を、うっかり「消去」してしまった一冊ですが、

池寒魚 『隠密絵師事件帳』(集英社文庫)

です。

 

 「消去」してしまったので、書き直しました。この様な時に、「メモ」をとっていると救われます。

 以前、このブログにアップした、池寒魚『画鬼と娘 ー明治絵師素描』(2020年)を書いた作家の処女作(2018年)で、ここにも河鍋曉斎が登場します。
 なかなか端正で、描写が細かく(街の物売りの声が聞こえてきそうです)、文庫には惜しい作品です。
 この作家は、幕末を深掘りして書いていますが、学者か教師でしょうか、“覆面作家”のホントのキャリアが気に掛かります。

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結婚45年を迎えます。 特集:私の、プルースト「失われた時を求めて」の読み方。

 近日、結婚、45年(サファイア婚)を迎えます。

 天気がよい日を狙って、この3日間、家のワックス塗り、庭の雑草取り(途中、屈んだ時に、目の前で、蛼(こおろぎ)が鳴いていました。)をして、老骨がギシギシ痛みます。
 終わった翌日は、ご褒美に、また、結婚記念日も兼ねて、中華料理のコースを楽しみました。

 さて、本題です。

 このところ、雑誌「文学界」(文藝春秋社)、10月号の特集『プルーストを読む日々』を楽しみました。
 「プルースト」の特集とは、もちろん、フランスの小説家、マルセル・プルースト(1871-1922)で、その著書、多分、多くの人が、通読に“挫折”する、「失われた時を求めて」(1913ー1927)の特集です。

 

 特集では、まず、14人の作家による「リレーエッセイ」で、「失われた時を求めて」を読み通していない、気鋭の作家たちが、それぞれ、1巻ずつ読んでエッセイを書く趣向です。
 その内容は、それぞれ奔放で、オリンピック・パラリンピック演出で、差別がやり玉にあがった小山田圭吾・小林賢太郎両氏のことを書いたり(古谷田奈月)、銀座のホステスの話だったり(鈴木涼美)、公衆便所が出て来たり(吉村萬壱)と、さすが、一筋縄でいかない文藝誌です。

 この特集で、有益なのは、吉川一義(岩波文庫版の訳者です)が書いた、14巻それぞれ各1頁の「梗概」です。
 コンブレー(1891年前後の少年時代)やタイソンヴィル(スワンの別荘)の「思い出」が、「パリから遠く離れた療養所」で思い出している(13巻)ことが分かることや、
郊外の散歩道が、貴族階級(ローム大公のちゲルマント公爵夫人のほう。1898年頃から夫人を「つけ回すのを止める」)とブルジョア階級(スワン家(メゼグリーズ)のほう、ヴェルデュラン夫人のほう)との相関、

誰と誰が同性愛なのか、誰と誰が愛人関係なのか、
アルベルチーヌの死(1900年代)、祖母の死(1898年)と祖母への想い、スワンの死、
恋心を持った(1892年頃)ジルベルトと、愛人ラシェルに翻弄されたサンルー公爵との結婚(1900年代)とサンルーの戦死とその娘16歳の初々しさ(最終巻)、

1891年頃にはベルゴットの小説を愛読していたのに(1巻)、1894年頃には「人を疲れさす」と評価し出すこと(4巻)
・・と、予め羅針盤の様に整理出来るので、読んでいて大海に漂ってしまうこと、あるいは、「不揃いの敷石でつまずく」ことが少なくなります。
 ネタバレせずに順を追って読み、知っていくのが正統でしょうが、この大長編は、それは止めたほうが良さそうです。楽しむより、分からなくなって、楽しむどころで無くなるのがオチの様な気がします。
 ま、旅行案内書を読んで、まず、行った気になるような、現地を知り尽くすのも良いのではないでしょうか。

 筆者は、この書の当該頁に「見出し」を貼り付けて、参照しやすくして、数回熟読しました。おかげで、登場人物の相関が明白になり、読んでもいないのに、筋に関しては、理解できました。

 

 この特集で、面白いのは、
柿内正午 『プルーストを読む生活』(エッチアンドエスカンパニー。2020年刊)
の紹介と、著者と保坂和志との対談です。

 

 この書物は、ちくま文庫版10巻を読みつつ、日々の脱線も記録したものです。
 本書は、全750頁、厚さ5cmの同書(3,245円)を早速注文しました。少しずつプルーストを読みつつ、様々な書物も読む読書記録です。

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小川恭一 『江戸城のトイレ、将軍のおまる 小川恭一翁柳営談』 ~ 正装での、長時間の大礼行事に将軍、諸大名は、“小用”の苦労が並ではなかった様子が伺われます。

 まずは、昨日、映画「007/ノータイム トゥ ダイ」(直訳は、死ぬ時間は無い)を観て来ました。2時間44分の長丁場は、アクションの連続(クライマックスは、〈スターウオーズ〉風)で、007、ダニエル・クレイグの〈最後〉は、そう来たか ! なぜか、瞬間、目がウルウルしました。ファンの方は、観て、ケジメをつけておかれるのを奨めます。
(うっかり、重要な、2つのネタバレするのが怖いのでこれくらいにしておきます。)

 本題です。
 江戸文化・風俗研究科である三田村鳶漁(えんぎょ 1870-1952)の最後の弟子、小川恭一(1925-2007)の逝去の年に出版された「柳営(りゅうえい)学」(大名研究)の成果、

小川恭一 『江戸城のトイレ、将軍のおまる 小川恭一翁柳営談』(講談社)

を読みました。

 

 新書版、全445頁ですが、本編は311頁まで。後は、鳶漁・小川の師弟話(これに類した話は、各章冒頭などに頻出します)とやや長い後書き(386頁まで)、それに、詳細な「註」(435頁)と索引となります。
 「註」の中にも、後述する《桐油紙の便筒(べんつつ)》といった、本文に無い話が出て来ますので、ひと渡り目を通す必要があります。

 本書でやはり驚くのは、徳川将軍、各大名などが、きっちり礼装・正装したときの主に小用でしょう。
 股立(ももだち)、袴(はかま)の上部左右側に開いて、縫い止めた部分から、要するに、袴の横から、装束が乱れないように、家来が「尿筒(しとづつ)」を差し入れて、します。
 その家臣は、江戸城では、玄関裏に詰めていて、表坊主(約300人いました)に頼んで呼んでもらいます。

 従者が、布袋に入れて持っている、長さ50cm位のものです。
 「装束(しょうぞく)筒」、「便筒」、「小用筒」、「小便筒」とも言われ、銅製です。あるいは、竹製の節を抜いたもの、さらには、前述した、桐油紙の便筒(べんつつ)もあり、この時は、自分の懐に畳んで持っていた様です。
 余談ながら、家重は、“近い”ので、陰で、《小便公方》と言われたとか。

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門井慶喜 『地中の星』 ~ 早川徳次の東京メトロ(地下鉄)「銀座線」建設から五島慶太との株取得争い、戦時の半国有化から現在まで、地下鉄の知識が一気に得られ、乗るのも楽しくなりそうです。

 それにしても・・、
 本を読んで、ブログにまとめることは、書物の骨格をきっちり整理出来ますし、固有名詞も正確に覚えますし、何よりも、後に思い出す資料としても、実に、有意義、便利だと思います。

 さて、8月の新刊で、日本初の地下鉄発足を描いた、

門井慶喜 『地中の星』(新潮社)

を読みました。今年、72冊目の本です。
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 この著者の本は、今年2月に「銀閣の人」、少し前に「家康、江戸を建てる」などを読んでいます。心の中の独白や強調で遣われる () に特長があり、印象に残ります。

 本書は、私も、一番よく利用する「銀座線」が描かれていて、しかも、始めて知ることが多くて、読んでいて面白い。しかし、この路線は、見事なドル箱路線で、この線を造ったのは見事と言うほかありません。
 

 日本〈地下鉄の父〉と言われる、早川徳次(のりつぐ 1881-1942)の、36歳から61歳にわたる、地下鉄(「地下鉄道」と言うのが正しい)「銀座線」(浅草ー渋谷間)の計画・建設・経営に携わった生涯を軽妙に描きます。
 もっとも、正確には、徳次が造った区間は、浅草ー新橋間(昭和9年完成)です。徳次、54歳です。
 因みに、「銀座線」の「銀座」駅、A7、8番出入り口付近に、早川徳次の像(朝倉文夫・作「地下鉄の父」)が目立たぬところにあります。
 

 早大法学部卒、南満州鉄道→鉄道院→佐野鉄道・高野登山鉄道、再建後、34歳で飛び出し→ロンドン(鉄道院嘱託の肩書き)と言った鉄道一筋の経歴です。高野登山鉄道再建後、軻母子と、衆議院議員・望月小太郎の仲人で結婚しています。
 ・・小説の中で、「大切なのは、意思じゃなく結果」、と述べています。

 前半は、早川徳次(36歳)と妻・軻母子(かもこ。33歳)で二人して、都内の交通量調査を「ひじきの中の煮豆を使って」細々とはじめ2年。
 次は、資金集めと会社(「東京地下鉄道株式会社」)設立、許認可取得の苦労です。
大隈重信(当時79歳・公爵)、渋沢栄一(同77歳・男爵)、後藤新平・鉄道員総裁(この時の“腹心”に五島慶太がいました)、奥田義人・東京市長などへの接触や根回し。これらまでに8年ほどが費やされます。

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子を喪った「はかなさ」の表現を文学で考える ~王朝文学以来の「無常」は、哲理的な「無常観」から、菅原道真の死を境に、気分を伝える芸術的な「無常感」に、大きく転換して行ったという指摘が、菅原道真と紀貫之を比較して理解できます。

 「あつ、確かあったはず」・・、と書棚を探すと、ありました。

『日本古典文学大系 72 菅家文草 菅家後集』(岩波書店)

です。
 

 どうして、こんな凄い本を買ったのかな ?
 川口久雄校訂で、岩波書店、昭和41年刊行。全739頁の大冊です。数年前に、古書市で500円で買ったもの。菅原道真(845-903)の漢文集です。

 「菅家文草」とは、昌泰3年(900)に、道真がそれまで書いた詩文を編纂して、醍醐天皇に献上したものです。
 その200頁に漢文・28行の「阿満(あまる)を夢みる」がありました。
 39歳(883年)の時に、3番目の7歳の子阿満、次いでその弟も相次いで喪った悲しみを唱ったもので、「日本文学の中でも希有な彫りの深い哀傷文学」(川口久雄)です。
 因みに、阿満(あまる)とは、固有名詞では無く、愛情を込めて、私の息子、と言う意味です。

 これを詳述しているのが、

島薗進(しまぞの すすむ)『あなた自身の生死観のために』

(月刊「一冊の本」(朝日新聞社)9月号・第17回。14頁所載)です。
 同書では、子を喪った悲しみを、もう一冊、
紀貫之(872-945)『土佐日記』
で比較しています。

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日生劇場のオペラ「カプレーティとモンテッキ」のプレ・イベント講演会、「「神曲」と分断の時代」で、貴重な話を聴けました。

 余談ですが、昨日、古書店で、
ロバート・ドニントン『オペラとその象徴 モンテヴェルディからヴァーグナーまでの舞台表現』(音楽の友社)を購入しました(3,300円→510円)。
 

 プシュケー(個人を動かす原動力としての精神的・心理的な機構)が下敷きとなっていて、今回のオペラや、明年のオペラ「影のない女」の鑑賞のみならず、後日アップするプルーストの文学鑑賞にも役立ちそうです。

 さて、前日とは違って、晴天の一碧、とはいかない9月25日(土)、東京日比谷に出て、まずは、“贔屓”にしている日比谷シャンテの3階にある、書店「HIBIYA COTTAGE」に立ち寄りました。
 広いフロアに、独特の分類で、普通の書店には無い、珍しい書物がたくさん置いてあって、書物に対する見識と愛情に感心します。

 その後、2時から、東京日比谷・日生劇場7階大会議室で、オペラ『カプレーティとモンテッキ』公演のプレ・イベント、

講演会 「「神曲」と分断の時代」

を聴講しました。
 

 オペラは、11月13,14日公演の、
カプレーティとモンテッキ」(全2幕)
作曲・ヴィンチェンツイオ・ベリーニ(1801-1835)、
台本・フェリーチェ・ロマーニ(1788-1865)
です。
 余談ですが、日生劇場のオペラは、日本生命のバックがあるせいか、破格に安いのも魅力です。
 講師は、原基昌(イタリア文学)粟国淳(演出家・日生劇場芸術参与)です。
 粟国氏は、2歳で、オペラ演出家の父親・粟国安彦とイタリアに渡って育ち、ローマ歌劇場でオペラの演出の研鑽を積まれました。筆者が、芸術文化財団事務局長だったおりにもバロック・オペラの演出をお願いしたことがあったのは、何度もお話ししています。

 氏の演出は、よくある過度な現代的工夫で、オペラの一体性を壊したりしないところが好きです。その意味で、講演を聴きながら、前述の『オペラとその象徴』の論旨が頭に浮かびます。
 なお、オペラの音楽的・文学的な予習は、このブログ「2021年7月2日」(←ここをタップするか、または、このブログの、右上から2番目の「全記事表示リンク」の「全ての記事を表示する」をタップして、「2021・07・02」をタップしてお読みください。)にアップしています。

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原田マハ 『リボルバー』 ~ ゴッホの死の原因となった拳銃をテーマに、ゴーギャンとの人間関係への想像を膨らませた作品です。

 そろそろ直木賞を受賞かな、と思っていましたが、残念でした。その原田マハ(1962-)の新刊(2021年5月)、

原田マハ 『リボルバー』(幻冬社)

です。
 

 元キュレーターらしく“絵画”を題材にして、今回の主人公は、パリ美術大学を卒業して、パリのオークション会社CDC(「キャビネ・ド・キュリオジテ」)に勤めて5年になる〈高遠冴(さえ)〉(37歳)が主人公です。
 その高遠は、「ゴッホとゴーギャン」の研究論文を執筆中の19世紀印象派絵画の研究者でもあるという設定です。

 本書の題材は、フィンセント・ファン・ゴッホポール・ゴギャンの2か月で終わった、パリから1時間ほどのオーヴェ-ル=シュル・オワーズ村での共同生活の葛藤と、フィンセント(ゴッホは、こう呼んで欲しかったと何かの本で読みました。)の死に係わるリボルバー(回転式拳銃)となっています。

 ところで、2019年6月19日の新聞記事によると、パリの競売会社ドゥリオが、フィンセントの「自殺に遣われた可能性が高い」とみられる、仏ルフォーショー社製リボルバーをオークションに出し、16万2,500ユーロ(約2千万円)で落札されたとあります。
 多分、これがヒントになって本作品が上梓されたのではないかと想像します。
 

 ただ、本作には、それとは別の、もう一挺の赤錆びたリボルバーが登場し、その持ち主サラ・ジラール(サラ・エロディ・フランソワーズ・ジラール)が、高遠の会社に持ち込むところから話が始まります。
 それから・・(ネタバラシになりますが)、

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プロフィール

Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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